【スタンダード】
一般的な外観は、堂々とした態度に優雅さがプラスされています。決して、重さを感じさせてはいけません。大型犬ながら、あくまで、優しさを漂わせているのが、モンターニュの特徴です。
◯体高 雄は70~80cm、雌は65~72cm 完全なタイプであれば2cmの差はOKなのですが、近年は平均体高値が上がっています。ブリーダーが、体高のある犬を好む傾向があり、スタンダードの上限ギリギリか、それ以上の体高の犬が増えて来ているようです。
◯体重 体高との関連で変わりますから、数字を示してはいませんが、痩せ過ぎていたり、敏捷さを発揮出来ないような肥満では困ります。例えば、体高が80cmなら、適正体重は60キロくらいでしょうか。
◯頭部 体型に対してあまり大きくありません。頭蓋は丸みを帯びていて、後頭部には突起があります(突起については、フランスのオリジナルで、イギリスやアメリカや日本のスタンダードにはありません)。頭蓋から吻部への傾斜は緩やかです。頭蓋と鼻梁の間のストップと呼ばれる部分の角度は、ほぼ160度で、深過ぎても浅過ぎてもいけません。頭蓋の最大幅は、頭蓋の長さにほぼ等しく、鼻梁の長さも又、頭蓋の長さにほぼ等しいのです。コンテ・ドゥ・フォワ犬舎のドクター・ジラの研究に依ると、鼻梁の長さは頭部全体の2/5、頭蓋の長さは3/5という割合が,理想的な頭部のプロポーションだそうです。
◯目 犬の表情を決めるポイントになります。色は琥珀の褐色で、暗過ぎても明る過ぎてもいけません。形はアーモンド形で、目縁が垂れ下がっていないこと。目縁が真っ黒であることは、言うまでもありません。目の位置も、両目の距離が近過ぎたり離れ過ぎたりしていないこと。そして何より、優しく夢見るような眼差しこそが、モンターニュに求められます。ピレネーの山をじっと見つめているような眼差し…と、昔から表現されて来た通りです。抽象的な言い方になりますが、そういう印象がとても大事なのです。
◯耳 耳の位置は、平常時には最上部が目の高さにあります。注意を喚起されると、当然耳の付け根は上がります。音をよく聞こうとする為なのでしょう。いつもの瞑想に耽っている表情が一変します。耳が頭蓋の上の方に付いているだけで、美しいモンターニュの表情は崩れてしまうのです。
◯頚部 短い頚ですが、太く力強さがあり、厚い被毛で護られています。特に頚の下の方の被毛は豊かなので、頚が狭まることなく頭部と胸を自然なラインで繋いでいるように見えます。
◯肩 肩の基本となる骨は肩甲骨で、頚の根元に位置しています。横から見る肩甲骨と上腕骨の作る角度は、約110度です。この角度は緩衝装置の役目を果たし、モンターニュの骨格ががっちりしている割りに、しなやかな感じがすることに関係しているようです。
◯胴 胸は、それ程幅広ではありません。それでも、両肢の間に、横にした手がゆっくり入る間隔は必要です。この胸の幅は、犬の利用目的によって淘汰された結果、闘犬などは広さと強さが優先され、牧羊犬のように走るスピードを要求される場合は、幅が狭くなります。モンターニュに関しては、闘争のための強さと、山中を移動するためのダッキングと忍耐を求められた結果、広過ぎず狭過ぎずの幅になりました。背は長さがあり、水平または肩から骨盤まで緩やかに下がっているかです。後方に上がっていたり、凹んでいたり、アーチ状になっていてはいけません。腹は下がっていません。逆に、グレーハウンドのようなほっそりした腹も駄目です。体の構造は、相互作用を持つ要素の集まりですから、一つの要素が適切でなければ、全体のバランスは自ずと崩れて来ます。
◯四肢 前肢は、正面から見て垂直でなければいけません。両肘が近づいていたら、前腕が外に張り出して外向肢勢になり、逆に、離れ過ぎていたら、内に入り内向肢勢になります。前肢の前面は細い毛で被われ、後面は長い毛で量も多く、飾り毛状態です。後肢の飾り毛は、前肢より更に長く量も豊富で、キュロットと呼ばれています。後肢の尾の下にある筋肉はよく発達し、丸みを帯びながら締まっています。
足の飛節は、後肢の全推進力の起点であり、終点です。幅が広く頑丈で、角度がついていなければなりません。理想的な角度は、140~150度です。それ以上鋭角になると、所謂、腰から後ろが落ちている感じがします。逆に、180度に近い真っすぐな飛節だと、臀が持ち上がって、背が肩の方に食い込んでいる状態になります。当然、歩幅が狭く歩様もぎこちないので、モンターニュとしては失格です。
両後肢には、二重の狼爪があります。二つあっても、不完全な形のものは認められません。
◯尾 かなり長く、ふさふさとしています。休息時には低く保持し、活動時には背上に輪を作る形に上げます。(この輪の状態を、ピレネーの山では「アルンデラ」と言います)尾を垂れている時に、その先端を触ると、鈎状に曲がっているのが分かります。ショーの会場で走る犬の中には、尾を上げていても中途半端で、きちんと輪を作っていない…と、RACPの前会長であるマンセンカル氏が嘆いていました。モンターニュ特有の「アルンデラ」は、ある意味、伝統なのです。マンセンカル氏の嘆きは更に続き、外国人ジャッジの中で「アルンデラ」を減点する者さえいると言います。時代と共に変わらなければいけないものと、決して変えるべきではないものの区別は、何事においても大切です。
◯毛 体の部位によって毛の構造が違います。顔や四肢の前面の毛は、細くて短く、密に生えています。頚は、下毛が長く密で、豊富です。他の部分は、長くて粗い毛と短い羊毛のような下毛との、二重構造になっています。毛の量や質は、気候と犬の飼育条件で変わって来ます。標高1000mの戸外で暮らす犬と、暖房の効いた家の中の犬とでは、毛質が同じはずがありません。前者は、毛が厚く豊富な上、下毛も多く密です。春の換毛期には、下毛が大量に抜け落ちます。後者は、絹のような細い毛で、下毛の量は多くありません。季節の影響をあまり受けず、年中毛が入れ替わる傾向にあります。アメリカや日本のショーでは、犬をより白く洗い上げて、送風機やドライヤーで毛をふんわりさせていますが、フランス人から見ると、かなりナンセンスに感じるようです。
◯被毛 色に関しての通説があります。一つは、真っ白の被毛だけが純血犬の印であるという説。もう一つは、逆に真っ白の被毛は変質の印で、犬種の代表でないという説。どちらも間違いです。モンターニュは、白一色でも斑が入っていても、色素欠乏という欠点を伴っていなければ認められています。昔の資料を見ると、いろいろな犬が存在したようです。白にオレンジ、黄土色、栗色、灰色、黒の斑があると書かれています。20世紀に入るまでは、白い毛並みの犬より、斑の多い犬が好まれていたのかもしれません。白い犬が流行したのは、1960年代にテレビで放映された「ベルとセバスチャン」というドラマが、きっかけになったと聞いています。日本では、1981年にアニメーションで「名犬ジョリィ」として登場しました。この犬種を、この番組で初めて知ったという方も多いと思います。フランスでも、モンターニュの人気が頂点に達し、需要と供給の関係から、斑のある犬が段々少なくなったのだそうです。白い犬を閉め出す訳ではなく、真っ白な犬同士を交配すると、色素沈着不足という欠点が何世代にも亘って遺伝することを、知っておかねばなりません。
◯歩様 モンターニュは、しなやかな歩き方をする犬です。長方形の構造と長い肢の基幹骨と曲がった飛節のお陰で、後肢を固定し、それが後ろに伸び切るまで押すことが出来ます。一方、前肢は揺らぐことなく、並足の歩様はスイングしているようです。しかし、起伏の多い山での移動には適しません。山では、側対歩という、同じ側の2本の足を同時に出す歩様をします。そうすると、腰の部分がローリングして、比較的少ないエネルギーで移動出来るのです。ショーのリング上では、決してやってはいけない歩様ですが…。