【モンターニュの性格】
先ずは長所から。魅力的で、大人しく、協調的で、情が深く、社交性があり、勇気がある、忠実で、献身的で、注意深く、陽気で悪戯好き、そして、とても頭が良く、自由をこよなく愛する犬です。しかし、短所の数も同じくらいあります。支配者であり、頑固者、むっつりとして、服従しない、遁走癖がある、疑い深い、うるさく吠え立てる、無頓着である、強情で手に負えない犬でもあるのです。
このように長所と短所は、コインの裏表の関係と思った方がいいでしょう。それぞれの主観によって、それが長所だったり短所だったりするのです。本来の素質が、その犬の置かれた環境で如何ようにも変化して、性格を形成していくことを忘れてはいけません。
自立志向の強いモンターニュは、ともすれば、群れの長に収まろうとします。穏やかで優しい性格を持ち合わせていても、自由を謳歌する楽しみばかりを与えられれば、家庭の暴君になってしまう可能性があるのです。仔犬の頃に、人間と暮らして行くルールや序列をきちんと学ばせなければいけません。とは言っても、この犬種はレトリーバー種と異なり、調教や訓練をする必要はまったくありません。至って穏やかに躾をすることで、十分に効果を発揮出来ます。むしろ、権力を行使して服従させようなどと考えたら、危険な犬になってしまいます。モンターニュの賢さは、自分で状況判断をして行動するところです。命令をされたから動くのではなく、飼い主を喜ばせたいが為に、たまたま言うことを聞いただけなのです。
モンターニュの性格を物語るようなエピソードは、フランスでは事欠きません。例えば、最近の出来事ですが、ピレネーのある谷間の村で、通りがかりの人が急斜面から滑落して、脳震とうを起こしました。それに気づいた1頭の雌のモンターニュが、自らその人の側に陣取って一晩中付き添い、意識を取り戻すまで手や顔を舐め続けていたそうです。
日本でも、同じような話を聞いたことがあります。ある家に飼われていた5歳くらいのモンターニュが、2階から足を踏み外して落ちて来た幼児を、階段の下で横になって受け止めました。幸いにも、犬がクッションになり、その子は怪我一つしなかったと言うのです。また、車道を逸れて向かって来た車の前に飛び出して、ご主人を救ったモンターニュもいます。
しかし、美談ばかりでもありません。ピレネーのスーロール峠近くのモンターニュは、村では有名犬でしたが、いつ頃からか、羊の群れを置き去りにして、教会のミサに出かけたり、映画館に入って座り込んだりするようになりました。元々羊飼いの家で育ち、羊の群れを護っていた犬です。ただ、一日のうちの何時間かを、観光地の農場で過ごしていたので、すっかり観光客に馴れてしまい、羊を護る仕事より人に可愛がられることに幸せを感じるようになったのです。ついには、犬の入園が禁止されているピレネー国立公園にまで、人と一緒に入って行く始末です。こうなると、もう本来の仕事には戻れません。どこで間違ってしまったのでしょうか。時代を遡ると、まだまだモンターニュの逸話に出会えます。又の機会に披露するとしましょう。